「命は1個しかないから大事」

ある日、教室のなかで、ある子どもからこんな言葉が自然と飛び出しました。ぽつりと言ったまっすぐな一言。

その言葉を聞いた瞬間、教室の空気がふわっと温かくなりました。

実はこの言葉、東光寺の本堂で行われた「花祭り」という行事が終わったあと、教室で先生とお話をしていたときに生まれたものです。
※袖師保育園は東光寺の境内にあります。
子どもたちの心に、そんな優しい宝物が芽生えたある一日の様子をお届けします。

「お釈迦さま、おめでとう!」出発前の教室

お寺に出発する前の教室では、子どもたちが目を輝かせて先生のお話を聞いていました。
「お釈迦さまはね、とっても綺麗なお花畑の中で生まれたんだよ。だから今日はみんなでお参りをしましょう。」
先生が優しく語りかけると、子どもたちは身を乗り出すようにして集中しています。

「じゃあ、今日はみんなどこに行くのかな?」
「お寺!」
「どうしてお寺へ行くの?」
「花祭りー!」

教室には、元気いっぱいで楽しそうな声が響き渡りました。
0歳児から5歳児・年長さんまで、みんなで一緒にお祝いの日を過ごせることを楽しみにしながら、東光寺へと向かいました。

お寺の静けさと、綺麗なお花に包まれて

東光寺の本堂に一歩足を踏み入れると、いつもとは違う、少し静かで厳かな空気が流れています。
子どもたちの目を釘付けにしたのは、色鮮やかなお花で美しく飾られた、小さなお堂(花御堂)です。その中には、小さなお釈迦さまが立っていました。


東光寺の住職でもある園長先生からお釈迦さまの誕生のお話を聞いたあと、子どもたちは一人ずつ、小さなおたま(柄杓:ひしゃく)を使って、お釈迦さまの頭からそっと甘茶をかけました。これは、お釈迦さまが生まれたときに、天からお祝いの甘い雨が降ったという由来にちなんだものです。

「おめでとうございます」

と心の中でつぶやきながら、真剣な表情でお水をかける子。
そして、胸の前でそっと手を合わせる子。
お香の香りが満ちる本堂の中で、子どもたちはそれぞれの方法で、目に見えない大切な存在にそっと心を寄せていました。

伝統の「仏教保育」が大切にしていること
お寺での静かな時間、綺麗なお花、優しく手を合わせるお友達の姿。そのすべてが子どもたちの心の中でつながり、冒頭の「命は1個しかないから大事」という、等身大の気づきとなったのかもしれません。

袖師保育園は、70年以上の長い歴史のなかで「みほとけの理想のもとに、心ゆたかな、やさしい子を育てる」という方針を大切に守り続けています。
その心の根っこを育てるのが、「仏教保育」です。


少し難しく聞こえるかもしれませんが、形だけの作法をおぼえることではありません。今回のように、行事や日々の暮らしを通じて、子どもたちが自然と周りの人を思いやり、「自分もお友達も、みんな大切な命なんだ」と、肌で感じる経験を重ねることです。


幼児期に五感を使って感じた「命の大切さ」は、これからの長い人生において他者を思いやる強い心の根っこになっていきます。
袖師保育園では、子どもたちが自ら気づき、心を豊かに成熟させていく姿を、これからも保育園に関わる全ての人達と共に、一歩一歩あたたかく見守っていきたいと考えています。